『通勤災害 合理的な通勤経路』

2023.04.24

『通勤災害 合理的な通勤経路』

当事務所の労働災害、通勤災害の考え方

労災保険の対象には、業務災害と通勤災害の2種類がある。 業務災害とは、労働者が業務を遂行するうえで生じた疾病や怪我、障害や死亡に至った事故のことである。 通勤災害とは、労働者が通勤(帰宅)中に事故に遭い、傷病や障害、死亡することである

通勤災害とは
住まいから勤務地または勤務地から住まいへの行き帰りの災害のことを言うのである。その経路のなかで大幅な寄り道は通勤災害とならない。原則決められた経路は直行なのである。例外もあるので詳しくは後述にのべておく。

当事務所は短時間のアルバイトや不定期アルバイト、複数のアルバイト雇用にも対応できるよう労災保険は当然ではあるが加入している。いうまでもなく労働管理は必須である。

身内を雇用している場合は正社員同様の働き方または基本的な給料支給の実態が備わっていれば、個別のケースに応じて労災適用となることもあるので注意されたい。但し、雇用している身内以外の従業員一人は居る必要はある。その従業形態は一月の内何日以上勤務しているかという縛りはある。またテレワークでの仕事もあり、何時間労働かの要件もあるので個別案件として、労働基準監督署へ問い合わせ頂きたい。経営者については従業員と同様に労災加入できないため、別途の入り方があるので考慮されたい。

1日の労働時間は原則8時間としている。

時給最低賃金 1000円

 

1 通勤災害制度の概要
 
(1) 通勤災害給付

通勤による災害についての労災保険給付
<条文>

労働者災害補償保険法七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
[中略]

三 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
[後略]

② 前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

③ 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

(2)「通勤」に該当するための要件
① 労災保険法7条2項に掲げる移動であること
② 当該移動が「就業に関し」行われたものであること(就業関連性)
③ 当該移動が合理的経路及び方法で行われたものであること
④ (7条2項の掲げる移動経路を逸脱・中断した場合)当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令(労災保険法施行規則8条)で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものであること
⑤ 当該移動が業務の性質を有しないこと
 
2 通勤災害に関する裁判例・行政解釈

[要件1] 就業場所から他の就業への場所の移動については、例えば、複数のオフィスを行き来するような場合(労災保険法施行規則6条参照)。住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動とは、単身赴任者が赴任先住居と配偶者等が居住している転勤前の住居との往復のような場合である(労災保険法施行規則7条参照)。
 
[要件2 ] 「就業に関して」といえるためには、その日に業務を行うために会社に出退勤することが必要である。したがって、休日の場合でも休日出勤を行った場合は、就業に関するためといえ、通勤災害といえる。また、通勤ラッシュを避けるために、少し早めに出勤したような場合も、同じく就業に関するためといえ、通勤災害に該当する。

終業後片付けや着替えなどの帰る準備をしていたら、5分や10分経過するのは普通に考えられることで、わずかでも終業時間を経過したら業務との関連性が否定されるのでは、「通勤災害」と認められる事例がほとんどなくなってしまう。そこで、終業後どれぐらい経過したらダメなのか、が問題になる。

これに関しては、厚生労働省が通達を出しており、「終業後2時間以内」なら基本的にOKだとされている。もちろん、特殊な事情がある場合は2時間を超えても大丈夫なことが多い。
 
[要件3 ] 通勤災害にいう「通勤」とは、就業に関し、労災保険法7条2項にいう移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいうとされている。

通勤災害は、必ずしも車を使用する場合に限られていない。歩いて出社する従業員や自転車での事故も対象になる。また、バスや電車といった公共交通機関を利用して、けがをした場合も通勤災害になってくる。

全く寄り道をせずに、会社に届け出た経路で通勤している最中にけがをした場合には、「通勤」といえることは明らかである。が、中には、途中で子どもを保育園に送迎したり、スーパーで買い物に行ったりということもあるから通勤災害とは言えないこともある。
 
[要件4 ] それでは、通勤経路から一時的に離れた場合については、どのようになるか。

この点、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはならないと取り扱われている。
したがって、スーパーの駐車場で事故にあった場合などは、逸脱又は中断の間における災害に当たるので、通勤災害にはならない。同じく、コンビニに寄った場合には、コンビニの敷地内で事故にあった場合には、通勤災害にはならないのである。

ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き、すなわち、逸脱・中断の前と元の経路に復した後には、「通勤」となる場合がある。

[要件5] 業務の性質を有するもの

移動の要件をみたす往復行為であっても、その行為が業務の性質を有するものである場合には、通勤とはならず業務災害となる。具体的には、事業主の提供する専用交通機関を利用する出退勤や緊急用務のため休日に呼出しを受けて緊急出動する場合などが該当し、これらの行為による災害は業務災害となる。

厚生労働省令(労災保険法施行規則8条)について

 「日用品の購入その他これに準ずる行為」とは、社会通念上、日常の生活を営む上で必要な行為で、かつ、その態様が日用品の購入と同程度と評価できるものをいい、本人又は家族の衣、食、保健、教養のための行為及び公民権の行使に伴う行為等がこれに該当する。
1.日用品の購入その他これに準ずる行為
2.職業能力開発のための受講
3.選挙権の行使その他これに準ずる行為
4.病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

 上記労災保険法施行規則8条の取り扱いについて

1.日用品の購入その他これに準ずる行為
帰途で惣菜等を購入する場合
クリーニング店に立ち寄る場合
理美容院に立ち寄る場合
独身者・単身赴任者が食堂に食事に立ち寄る場合
入院している同居の家族の洗濯物を取りに病院に立ち寄る場合
法第7条第2項第2号(事業場間移動)の場合の次の就業場所の始業時間との関係から食事に立ち寄る場合
法第7条第2項第2号(事業場間移動)の場台の図書館等において業務に必要な情報収集等を行う場合
法第7条第2項第3号(住居間移動)の場合の長距離を移動するために食事に立ち寄る場合
法第7条第2項第3号(住居間移動)の場合のマイカー通勤のための仮眠を取る場合

2.職業訓練、学校教育法第1条に 規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為   
専修学校における教育
各種学校における教育については、修業期間が1年以上であって課程の内容が一般的に職業に必要な技術を 教授するもの
一般的に職業に必要な技術を教授する課程の例としては、工業、医療、栄養士、調理師、理容師、美容師、保 育士、商業経理、和洋裁等に係る課程

3.選挙権の行使その他これに準ずる行為    
最高裁判所裁判官の国民審査権の行使
住民の直接請求権の行使

 4.病院又は診療所において診察又 は治療を受けることその他これに準ずる行為
施術所において、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等の施術を受ける行為
 通勤災害に関する裁判例
通勤災害と認定されるためには、「通勤による」災害であること(通勤起因性。通勤に通常伴う危険が具体化したものであえること)が必要とされる(労災7条1項2号)。

労災保険法にいう「通勤」と認められるための要件(上記1①~⑤)の具体的適用については様々な行政解釈・判例が出ている。
 ・逸脱・中断の取扱いについて
例えば、夕食材料を購入するために、帰宅途中、交差点を自宅と反対の方向に曲がって商店に買い物に行く途中で交通事故にあい死亡したというケースでは、通勤経路からの逸脱中の事故なので、たとえ日用品の購入目的であったとしても、通勤災害には該当しないこととなった(札幌高判平成元年5月8日)。
しかし、買い物を終えて、通勤経路に復帰した場合には、通勤の範囲に含まれ、通勤災害になるのである。

大学院単位取得  著作者 上野誠治

2023年3月10日現在

上記はまだ書きかけ項目です手直しが必要な場合があります

 

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